​サンプルシナリオ BL

​​猫目 青

※このシナリオはボイスドラマを想定して創作しています。


 タイトル


 片思いしていた幼馴染が結婚する。思いをこらえきれず口づけをしてしまった俺を、幼馴染も抱きしめてきて……。

(もしくは黄昏の流星という名前でもあります)


登場人物


賢治(けんじ)

主人公。一人称は俺。海葉に恋心を抱いている。


海葉(かいば)

文筆家。一人称は僕。賢治の幼馴染で思い人。清子という婚約者がいる。


あらすじ

出版社に勤める賢治は、幼馴染で文筆家の海葉に片思いをしている。小さい頃、母親を亡くした自分を慰めてくれた海葉を賢治はずっと思い続けていた。だが、海葉には婚約者、清子がいた。賢治は思いを堪えることができず、結婚間近の彼にキスをしてしまう。すると海葉も賢治を抱きしめてきた。予想もしなかった海葉の反応に驚き、賢治は彼を避けるようになる。そんな賢治のもとに海葉から結婚式の招待状が届く。悩みながらも結婚式に出席した海葉が見たものは、教会で愛する清子の遺影を持った海葉の姿だった。

 清子は1年前に亡くなっており、その一周忌を海葉は結婚式と称しておこなっていたのだ。海葉は実は海葉も賢治が好きだったこと。その悩みを清子に聴いてもらっているうちに、清子と恋仲になったことを賢治に伝える。

 2人は思いを伝え合い口づけを交わす。黄昏時、二人はペルセウス座流星群を眺めながら、この先も共にいようと誓い合うのだった。



 シナリオ本編

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賢治「銀河鉄道の夜……。読んでも、意味わかんねえな。なんで俺、こんな本の解説本の担当してるんだ……」

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説明

 俺の名前は賢治。あの有名な童話作家と一緒だが、文学についての造形はとんとない。それなのに、出版社に勤めている人間だ。

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海葉「ちょっと、賢治。今日は僕が執筆する本の打ち合わせをしてるんだよ! しかも、出版するのは銀河鉄道の夜の解説本だよ。担当の君が、意味わからなくてどうするの?」

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説明

 俺をどなりつけるこいつは幼馴染の海葉。ぼさぼさ頭と丸眼鏡がトレードマークの引きこもり作家だ。意外と頭がよくて、文学作品の書評や、古典の解説も手がける。

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海葉「僕の本の売りあげは、君の手腕にかかってるんだよ。それにさ……」

賢治「そ、来月。結婚するんだったよな」

海葉「そうそう、やっと清子さんと結婚できるよ。長かったなあ……」

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説明

海葉は指輪のはまった左の薬指をいとしげに眺める。俺はそんな彼を見て、胸を痛めていた。幼馴染の結婚を祝福できない自分が恥ずかしい。男の俺が、彼と結ばれるはずがないのに。

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海葉「僕たちが洗礼をうけた教会で、清子さんともうすぐ式をあげられる。考えるだけで緊張するよ。彼女のためにも今はお金が必要なんだ。頼むよ、編集担当さん」

賢治「ああ、過労死しない程度に頑張るよ……」

海葉「過労死はしないだろう。 君、休日は寝てばっかりだもん。せっかく出版社に勤めてるんだからさ、宮沢賢治全集でも読めばいいじゃない? とくに星めぐりの歌と、双子の星はおすすめだよ」

賢治「どっちも、銀河鉄道の夜にでてくる賢治の作品だな。星めぐりは歌詞だけどな」

海葉「あれ、よくわかったじゃん。普段は漫画しかよまないくせにさ。もしかして、ますむらひろしさんの銀河鉄道の夜の漫画のあとがきとかに書いてあった?」

賢治「別に、自分で調べただけだよ」

海葉「今はネットでわかるもんね。そういうことか」

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 説明

好きなやつの好みの本ぐらい把握している。そう言えない自分がもどかしい。俺は海葉の友達で、それ以上の存在ではないのだ。

 けれど、俺にとって海葉はかけがえのない存在なのだ。

 ペルセウス座流星群が降り注いでいた幼い日のあのときから。

海葉は俺の特別な人なんだ。

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 場面展開・賢治の回想に入ります

それは俺の母親の葬儀があった日のことだ。母の埋葬に立ち会っていた俺の隣には海葉がいた。

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賢治「母さん……埋められちまう……」

海葉「大丈夫。あそこに、賢治のお母さんはいないよ」

賢治「だって、母さんの体、土の中に埋められて……。あんなんじゃあ、母さん出てこれないよ。ひどいよ……」

海葉「大丈夫だよ、おばさんの魂はもう、体から離れてるから。何も恐くないよ」

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説明

 震える俺の手を海葉が握ってくれる。そんな海葉の手を俺は握り返していた。

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海葉「大丈夫だよ。父さんが言ってた。人間は死んだら体を捨てて、星になるんだって。おばさんは冷たい土の下なんかにいない」

賢治「そうなのか……」

海葉「うーん、あ、流れ星」

(海葉、うーん、まで何かを考えているような感じで、あ、流れ星、からは弾んだ声でお願いします)

賢治「え?」

海葉「ほら、流れてる。まだ黄昏時なのに凄い! ほら! また! 白い光の筋がさーって、空を駆け抜けてる!」

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説明

 弾んだ海馬の声につられ、俺は顔をあげる。そこには地上へと落ちていく、無数の流れ星の姿があった。

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海葉「すごーい! こんなに流れてるの、初めて見たよ。あんな綺麗な場所に、賢治のお母さんはいるんだね」

賢治「母さんが、あそこにいる……」

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説明

 俺は海葉の言葉に涙を流していた。悲しんじゃない。嬉しかったんだ。母さんがあんなに綺麗な空にいると分かったことが。

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海葉「そう、賢治のお母さんは銀河の果てにいるんだよ。僕たちも死んだらそこにいく。だから、寂しくなんかない。ちゃんと見守ってくれる人がいるもの」

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説明

 微笑みながら海葉は言葉をくれる。俺は、そんな彼に頷いていた。

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説明・回想終了・

 このとき、海葉に抱いた感情がどんなものだったのか。俺はよく分からなかった。でも、成長するにつれて、俺はこいつのことが好きだって自覚していったんだ。

 俺は海葉に恋をしているんだ。

・話の舞台は、現代に戻ります

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賢治「はー、打ち合わせ終わり! 本当に賢治ってばやる気がないんだもん。まいっちゃうよ」

海葉「はは、すまないな……。調子がでなくて……」

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――説明

黄昏時、俺たちは空を眺めながら、家路に就こうとしていた。調子の出ない俺に、カイバは声をかけてくる。

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海葉「なんかさ、賢治寂しそうだけど、何かあった?」

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 海馬の言葉に心臓が高鳴る。もう、我慢できない。俺は、彼を抱きしめていた。

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賢治「海葉……」

海葉「賢治……」

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説明

 不安げな眼差しで海葉が俺を見る。俺は彼の唇にキスをしていた。彼もまた、俺を抱きしめ返してくれる。

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海葉「賢治。君……」

賢治「あ、その……。俺……」

海葉「いいよ、何も言わないで……」


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説明

 ぎゅっと海葉が俺を抱き寄せる。そんな海葉を俺は引き離していた。

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海葉「賢治っ!」

賢治「ごめん! 俺、最低だ」

海葉「賢治!!」

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説明

 海馬が走る俺を追いかける。それでも俺は、振り返ることなく走り続けた。

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説明・場面切り替え

 あれから、何日たっただろう。

 俺は、有休を使い仕事すら休んで海葉に会うことを拒絶していた。そんな海葉から、手紙が届いたのだ。

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賢治「結婚の招待状? 俺なんかに、なんで……」

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説明

 疑問には思ったものの、俺は式に出席することにした。

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説明・場面切り替え

 結婚式がおこなわれるのは、俺の母さんの葬儀があった教会だった。教会の中で白いタキシードに身を包んだ海馬が俺を出迎えてくれる。

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海葉「久しぶり、元気してた? ぜんぜん仕事の打ち合わせにも来ないし、心配したよ」

賢治「ああ、元気だけど……。あの、ほかの出席者の人たちは? それに清子さんも姿が見えないけど」

海葉「いるよ、ここに。ほら……」

賢治「これって、写真?」

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説明

 海葉は写真が納まった額縁を持っている。額縁の中の写真には花嫁衣裳を着た女性が写っていた。

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賢治「写真って、その……。清子さんは……」

海葉「銀河鉄道に乗って空の果てに行っちゃたんだ。ちょうど、1年前ぐらいに。今日は、彼女の命日なんだ」

賢治「じゃあ、結婚式って……」

海葉「俺と彼女だけの一周忌。でも、それだとなんか辛気臭いから、結婚式にした。式挙げてなかったし」

賢治「海葉……」

海葉「大丈夫だよ。彼女は、ちゃんと空の向こうで俺を待っててくれるから。でも、今はいけないかな」

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説明

 そう言って、海葉は俺を抱きしめてくる。

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賢治「海葉……」

海葉「清子さんに謝らないとな……。地上で過ごしたい奴ができちゃった。それも、俺の初恋の人だよ」

賢治「初恋……」

海葉「そ。でも俺は男だから駄目だと思ってた。なのに、君ってば……。責任、とってよね」

賢治「とれって。だって、お前は……」

海葉「清子さんはずっと、俺の恋の悩みを聞いてくれてたんだ。だから、許してくれるよ。ねえ、賢治。君が、好きです」

賢治「いいのか、俺で……?」

海葉「何年、片思いこじらせてたと思うの? もう諦めてたから、彼女と付き合ってたんだよ」

賢治「またせて、ごめん……」

海葉「僕こそ、伝えられなくてごめん」

賢治「好きです。海葉のことが好きです。だから……」

海葉「うん、ずっと一緒にいよう」

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説明

 顔を見合わせ、俺たちは微笑み合う。そのまま、俺と海葉は唇を重ねていた。


場面切り替え入ります。

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「あ、流星群。黄昏時なのにこんなに降ってる! ほら、あそこにも白い光の筋!!」

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説明・場面切り替え

 海馬が楽しそうに空を見上げている。教会の外で、俺たちはペルセウス座流星群を見つめていた。

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賢治「あのときと一緒だな。母さんの葬儀のときも、こうやって2人で」

海葉「ずっと眺めてたよね。父さんたちが注意して、やっと空を見るのやめたっけ」

賢治「今は、ずっと眺めてられるな」

海葉「そうだね」

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説明

 手を繋ぎ合い俺たちは、空を眺める。これからも、俺は海葉と空を眺めるだろう。

 ずっとずっと一緒に。銀河の果てに旅にでるまで。

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                                       (了)