王様の初恋
Nordiske fantasy
「あなたなんて猫になっちゃえばいい!!」
そう俺に叫んだ彼女の顔が忘れられない。いつもは笑顔を浮かべている赤い眼に涙を浮かべ、彼女は俺を睨みつけていた。
「なんでっ! なんで私ばっかりこんな目に合うのよっ! どうしてっ!!」
突き飛ばされた俺は、唖然と彼女を見あげる。彼女は両手で顔を覆い、大声をあげて泣き始めた。
俺は立ちあがり、彼女へと近づく。
「来ないでっ!」
顔を覆ったまま、彼女は俺を怒鳴りつけた。びくりと俺は歩をとめてしまう。そっと両手を顔からとり、彼女は俺を睨みつけてきた。
「カットなんて、猫になっちゃえっ!!」
「えっ……」
「カットなんて大っ嫌いっ!!」
彼女は残酷な言葉を吐き捨てる。俺はびくりと肩を震わせていた。
彼女に嫌われた。その事実がどうしようもなく悲しくて、重く俺の中にのしかかってきたのだ。
大粒の涙をこぼしながら、彼女は俺の横を駆けていく。俺は、遠ざかっていく彼女の足音を聞くことしかできなかった。
俺の眼から涙が零れる。俺はその涙を止めることができなかった。
だって、悲しかったんだ。
悲しくて、悲しくて涙がとまらなかったんだ。
それが、俺の初恋。
彼女は今、どこで何をしているんだろうか。