王様の決意

                  Nordiske fantasy


「フィナとは、結婚しません」
 そう自分の意思を伝えると、父であるティーゲルは大きく口を開けて黙り込んだ。そんなに口を開けたら顎が外れてしまうかもしれないと、カットはどうでもいい心配をしてみせる。
 ふぃんと猫耳を動かすと、ティーゲルは我に返り、カットに言葉を返してきた。
「ちょっと待て、カットっ! お前は、フィナのことを愛していないのかっ!?」
「愛してますよ。だから結婚はしません」
 椅子に深く座り、両指を組んだカットは父に優しく微笑んでみた。そんなカットをティーゲルは唖然と見つめる。
「フィナと結婚しなければ、お前の王位は――」
「だから、王位も誰かに譲位しようと思います」
 笑みを深め、カットは言葉を続ける。ティーゲルはぎょっと眼を見開き、怒声をカットに浴びせていた。
「お前、それがどういうことを意味してるのか分かっているのか!?」
「だから、相談のために叔父上たちに手紙も書きました。いくつか返事も届いてますよっ」
 机を両手で叩く父の前に、カットは手紙の束を転がしてみせる。譲位を相談するためにしたためた手紙の返事は、すでに半数を超えようとしていた。
「カットお前……」
「それから、父上が解散させた王族警護隊も近々復活させる予定です。レヴを使って元隊員たちに話も通しておきました。昨日は城をこっそり抜け出して、久々に会ったみんなと王都で酒盛りもしましたっ!」
「カットっ!」
「父上は、俺に何かと進言してくれるみんなの存在が疎ましかったんですよね……。俺を慕ってくれる彼らを利用して、父上には色々と悪さもしましたし。それを、フィナを利用することで俺から遠ざけようとした」
 机を激しく叩き、カットは父の言葉を遮っていた。
「レヴも含め実力重視で選ばれたせいか、彼らは的確なアドバイスを俺にくれます。父上は、そんな彼らが権力を持つことを恐れた。だから、俺から彼らを引き離したんですよね?
 フィナのこともそうだ。フィナと俺の猫耳を使って、父上は周辺諸国への影響力を強いものにしようとした。この国も守り、自分の権力を保持するために……」
 今まで父に言えなかった言葉が、口をついてすらすらと出てくる。そんな自分がおかしくて、カットは苦笑を顔に滲ませていた。
「それに父上は、フィナをずいぶんと自分勝手にあつかっていたそうで……」
「カット……」
「気になって色々と調べさせていただきました。俺の花嫁になるはずの女性でしたから……」
 すっとカットの顔から笑みが消える。怯える父親を睨みつけながら、カットは言葉を続けていた。
「その咎で、フィナの父親であるウルを城の独房に拘束しました。それから、父上の息がかかった軍も、臣下たちも近々更迭する予定です。軍の方はフィナが活躍してくれたこともあって掌握が簡単でしたよ。今頃は、フィナの同僚たちが上官たちを拘束してくれていると思います。臣下たちの方に関しては、ウルに見せしめになってもらう予定ですが、父上はいかがお考えですか?」
 頭の中であらかじめ諳んじていた台詞を言い終え、カットはティーゲルを見すえる。ティーゲルは呆気にとられた様子で、カットを見つめるばかりだ。
「お前、いつのまにそんな……」
「レヴを俺のもとに戻したのが、運のつきです。あいつがいなきゃ、俺は何にもできない……」
 父に苦笑を浮かべながら、カットはレヴのことを思っていた。
 今回の件は、レヴがいなければ成功しなかったことだ。自分に忠誠を誓う臣下を遠ざけられていたカットにとって、レヴは唯一の味方といえた。
 レヴを密かに手足として使うことで、カットは父を出し抜くことができたのだ。
 すべては、フィナを守るために――
「たった1人の女のために、父を、この国を裏切るというのか、お前は……」
「俺が王位についていること自体が、国民を裏切っている行為と言えます……。それにフィナと国を天秤にかけたんですけれど、俺にとって大切なのは少なくともこの国じゃなかった……。だから、俺は王である資格がない」
「カット……」
「来週の舞踏会で、この猫耳のことを公にするつもりです。それから、集まってくれた叔父上たちとこの国の行く末についても話したい。申し訳ないですが、父上にはその話し合いの席に俺と一緒に同席していただきたい」
「儂が断ったら、どうするつもりだ……」
「ウルの首が文字通り飛びますよ」
 アイスブルーの眼を怪しく煌めかせ、カットは父に嗤う。人差し指で首を掻き切る仕草をしてみせると、ティーゲルは大きく眼を見開いた。
「それとも、このハールファグルで内戦でも起こしますか? 母さんの愛したこの国を、父上は戦地に変えることも出来るんですよ」
「カットお前……」
「命令です父上。俺に全権を譲り渡してください……。あとは、自分で何とかします」
 すっと眼を鋭く細め、カットは父に冷たい言葉を送る。ティーゲルは大きく眼を見開き、両手で顔を覆った。どさりと、彼は椅子に深く腰掛け大きく息を吐く。
「父上……」
「はははははははははははあははははあはっ!!」
 両手で顔を覆ったままティーゲルは哄笑する。彼は顔から手をどけ、満面の笑みをカットに向けてきた。
「でかしたカットー! 儂を出し抜くとは、さすが儂の息子じゃー!!」
「父……」
「カットッー!!」
「うぁっ!」
 ばっと椅子から跳び下り、ティーゲルはカットに抱きついてくる。とっさに避けようとしたものの、カットはティーゲルの腕に捕まってしまった。カットの体は無残にも椅子から転げ落ち、床に叩きつけられる。
「父上……」
 背中に走る激痛を感じながら、カットはティーゲルに呻き声を発していた。
「すまん、お前が可愛くてつい……。でも、そんなお前がついに儂を出し抜きおったっ! 寂しいが、子離れどきかのぉ?」
 ひょっこりと、ティーゲルがカットの顔を覗き込んでくる。
「お前の好きにするとよい。父である儂を愛するフィナのために超えたのだからな。なのにどうしてお前は、そんな悲しそうな顔をしとる?」
 しゅんとたれた猫耳をティーゲルがなでてくる。カットは潤んでいた眼を拭い、ティーゲルを見つめる。
「だって、俺だってこんなこと父上に言いたくない……。父上を傷つけたくなんて、ないんです……。その気だって、俺にはない……。でも、そうしなきゃフィナを守れない……。父上のお力が必要なんです。お願いです父上、俺を助けてください……」
 両手で顔を覆い、カットは父に助けを乞うていた。
 ウルを捕えているのは事実だが、彼にはすでに本当のことを話している。その話を承知したうえで、ウルは今回の件に乗ってくれた。
 すべてはフィナを救うため――
 ティーゲルを脅したのは、彼から全権を奪うためではない。ティーゲルから本音を聞き出すための芝居に過ぎない。
「何があったカット……」 
 そっとティーゲルがカットの体から退き、声をかけてくる。カットは両手を顔から離し、涙に濡れた眼をティーゲルに向けていた。
「母さんが、俺を裏切ったんだ……。俺のせいで、ハールファグルが大変なことになるかもしれない」
 掠れるような声が喉から出てくる。その声を聞いたティーゲルは、眼を見開きながらも静かに言った。
「話してみなさい。理由を聴こう……」
「父上……」
「お前は本当に泣き虫だな、カット。昔から変わらない。だが、それでいい。一国の王である前に、儂はお前に人でいてもらいたい」
 そっと父に頭をなでられ、カットは眼を見開いていた。そんなカットに微笑みながら、ティーゲルは言葉を続ける。
「儂は、先々代の王を、自分の父を殺して王位を奪った。お前の祖父は、王としては立派な方だったと思う。だが、人として何かが欠けていた。だから、儂は恐ろしくなって兄弟たちと父を殺したんだ……。お前には、儂と同じ思いをさせたくない……」
 ティーゲルは寂しげに眼を細め、言葉を紡ぐ。カットは体を起こし、自分の横に座る父に話しかけていた。
「おじい様は、それは恐ろしい方だったと、叔父上やウルからも聞いています……。だから、殺すしかなかったと……」
 自身の祖父のことをカットはほとんど知らない。だが、彼がティーゲルによって葬られた愚王だったことは伝え聞いている。多くの魔女を捕え、無理やり自分の子供たちを生ませていた。その子供たちが自分に逆らうと、彼らの家族を人質として捕え、処刑したことも。
「父に歯向かい、ヴィッツと腹の中にいるお前を殺されそうになった……。だから、儂は実の父を手にかけたんだ……。儂はお前を、もうそんな目に合わせたくはない。カット・ノルジャン・ハールファグルは、王である前に1人の人でなければいい。王である前に、儂はお前に人であって欲しいのだよ」 
 そっとティーゲルはカットに微笑みかけてみせる。どこか寂しげな眼差しを向けてくる父を、カットは抱きしめていた。
「ありがとうございます。父上……」
 泣きそうな声で父に感謝を告げる。
「それに、お前にはまだ儂が必要みたいだからのぉ。甘えん坊の息子を持つと大変だ……」 
「そうですね。早く俺も、親離れしないと」
 ティーゲルが、カットの背中を優しく叩いてくれる。そんな父の優しさに、カットは笑みを浮かべていた。







 ブルーベリーの花が壁一面に描かれた王妃の間に、フィナはいた。フレイヤ祭でカットに告白したとたん、ティーゲルにここに押し込められたのだ。
 けれど、それでもいいとフィナは思っていたのだ。
 この国の妃になるということは、政治の道具となることすら意味する。 
 カットの猫耳を公のものとする。その呪いをかけたフィナが彼の手中にあることを公表すれば、この国はかつてない安定を手に入れることができる。
 カットはそれを嫌がっていた。けれどフィナにはそれを入れる覚悟があった。
 彼のためなら喜んで道具になれる。
 償いではなく、愛する人として彼を守るために。
「でも、それができなくなったとカットが言いました……。私たちが結婚したら、このファールファグルが争いに巻き込まれるって……」
 寝台の上で、フィナは膝を抱えて蹲っている。フィナがいる寝台の前にはレヴが立ち、彼女の話を黙って聴いていた。
「陛下も、王位を誰かに譲渡したら君と一緒になるつもりだったらしいよ。だから、ティーゲル様がフィナちゃんをこの部屋に押し込めても、なんにも文句を言わなかった。でもそれが、できなくなった……」
 レヴの言葉に、そっとフィナは顔をあげる。後ろ姿しか見えないのに、彼の背中は寂しげにみえる。
「まさかヴィッツ様が陛下を裏切っていたとは、俺だって驚いたよ。しかも、息子を守るためにやったことが仇になったとか、何の因果だろうねぇ……」
 はぁっと大きなため息をついて、レヴは言葉を続ける。
「まぁ、陛下がフィナちゃんと同じ魔女であることは知っていたけれど、それがこんな結果になるとはなぁ」
 振り向いた彼は、フィナに苦笑を向けてくる。潤んでいた眼を拭い、フィナはカットが教えてくれた彼の秘密を思い出していた。
 カットの母ヴィッツの魔法によって魔女になっているという事実を。それがどうことなのか、彼は詳しく教えてくれなかったが。
「しかもそれがフィナちゃんの呪いを応用した大魔法っていうんだから、俺も教えられたときは驚きのあまり、鳴くことすらできなかったよ。体中の毛なんて、何か恐くてぞわっと立ちあがちゃうし……」
 寝台の支柱に体を預け、レヴは憂いた様子で眼を伏せる。
「レヴ殿、鳴くことすら出来ないって……?」
 彼の奇妙な発言に、フィナは思わず口を開いていた。ぴくりとレヴの体が反応する。彼は苦笑を顔に滲ませ、気まずそうに口を開いた。
「その……えっと」
「すみません。でも、さっきの発言はまるで……」
「にゃ?」
 フィナは隣で丸くなっているアップルに視線を移す。顔をあげたアップルは、きゅるきゅるとした眼をフィナに向けてきた。
 先ほどの発言は、レヴが自分自身を猫だと言っているみたいだ。
「あー、仲良くなり過ぎたせいで油断した……。やばいよ、陛下にお仕置きされる……」
 レヴは呻きながら、がしがしと自分の頭を搔き始める。
「ま、相手はフィナちゃんだし教えてもいいか……」
「レヴ殿……?」
「かなり驚くかもしれないけど、ごめんねフィナちゃん」
 にかっと満面の笑みを浮かべ、レヴはフィナに向き直る。何を思ったのか、レヴは寝台に倒れ込んできた。
「ちょっ!」
 驚くフィナの眼の前で、彼の体が淡い光に包まれる。雪を想わせるその光が消えたとたん、そこにはレヴではなく1匹の猫が横たわっていた。
 美しい赤毛を持つ、大きなノルウェージャンフォレストキャットだ。翠色の眼を猫はフィナに向けてくる。
「あー……。王の間の寝台と違って、王妃の間の寝台ってふかふかで寝心地最高……」
 気持ちよさげに眼を細め、猫はごろごろと喉を鳴らす。その光景を見て、フィナは固まっていた。
 レヴが消えて代わりに猫が現れたと思ったら、その猫が喋った。
「猫さんが……喋った……」
 震えた声を発しながら、フィナはおそるおそる猫に手をのばす。ごろんと猫は仰向けになり、フィナにお腹を向けてきた。
「ほーらフィナちゃん出血大サービスっ! 陛下にも滅多にさわらせない、もふもふのお腹だよぉ」
 眼を無邪気に輝かせ、猫は愛らしく髭を動かしてくる。柔らかな毛で覆われた猫のお腹は、とても気持ちよさそうだ。
 物凄くさわりたい。
 さわりたいが、驚きの方が勝っていてフィナは出しかけた手をとめていた。
「あ……あなたは一体……?」
「どうも、カット国王陛下の護衛兼飼い猫のレヴ・クラスティ・オーブシャッティンサンですっ」
 びっとピンク色の肉球が愛らしい片前足を持ち上げ、猫が返事をする。
「カットの飼い猫……?」
「フィナちゃんだって橇に翼生やしたり、陛下の耳を猫耳にしたりってやりたい放題やってるじゃないかよ。そんなに驚くことかなぁ……」
 不満げに眼を細め、猫になったレヴは前足をばたつかせてみせる。フィナはその前足を掴み、柔らかな肉球にふれてみた。
 湿り気のある肉球の弾力は、間違いなく本物だ。
「これは……一体」
「まぁ、これも陛下の魔法の一端ってやつだな。俺は陛下の魔法で人間になることができる猫なのよ。ちなみにアップルは、年の離れた俺の妹ですっ」
「にゃうっ!」
 レヴの言葉に、アップルが元気よく鳴いてみせる。フィナは勢いよく体を起こしたアップルを一瞥し、またレヴに視線を戻した。
 レヴは服従のポーズをやめ、俯せになっている。お腹にふふれられなかったことを後悔しつつ、フィナは彼に話しかけていた。
「じゃあ、陛下を誘拐したのって……」
「だって、陛下ってば俺が実家に帰るときに引き留めることすらしなかったんだよ……。陛下が恋しくなって城にこっそり戻ってきたら、なーんかフィナちゃんといい感じだし、ちょっとムカついてというか……。あ、ちなみに俺の義理の家族も俺が猫なのは知ってるよ。それを承知で俺を養子にしてくれたんだぁ」
「同衾しているのも……」
「同衾とか凄く生々しからやめてほしい……。冬になると夜の城ってすっごく寒くなるから、陛下は俺を湯たんぽ代わりに使うんだ。それと、前言ったように夜這い対策ね。おかげでこっちは毎日寝不足だよ……。もう、たしかに俺はもふもふであったかいけど、陛下は俺の苦労をちっとも分かってくれないんだ……」
「ティーゲル様に罠で捕まえられた話は……」
「あの老害おっさん、俺のことを狙ってるんだよ……。だからときおり城の中に猫用の捕獲機を忍ばせておいて、猫になった俺を捕まえようとするの。ほんと、俺は陛下一筋なのに迷惑な話だよね……」
「そもそも、あなたは猫と人間どちらなんですか?」
「猫だよっ! 可愛いでしょ? 猫の俺」
 フィナを見あげ、レヴはくるっと小首を傾げてみせる。その仕草がなんとも愛らしく、フィナは思わず彼の頭をなでていた。
「可愛いですっ! カットがうらやましいっ!!」
 眼をくわっと見開き、フィナは迷うことなく自分の本心を告げていた。
「にゃあ……」
 横になっていたアップルが顔をあげ、フィナに非難の鳴き声を送ってくる。
「すみません、アップルさん。でも、でも……可愛いものは、可愛い!!」
「フィナちゃん、気持ちいよぉ……」
 頭をなでてやるたびに、レヴはごろごろと気持ちよさげに喉を鳴らしてくる。うっとりと眼を細める彼の表情はなんとも愛らしい。
「にゃーっ!」
 鳴き声をあげながら、アップルが立ちあがりフィナに突進してくる。布団のうえでぽんっと軽く飛び、アップルはフィナの膝に乗ってきた。
「アップルさんっ!」
「にゃうっ!」
 顔をあげ、アップルはフィナをじっと睨みつけてくる。
「あーあ、何かあったときのためにフィナちゃん見守ってくれってお願いしただけなのに、俺よりも強い独占力を発揮してるのこの妹は……。兄妹って似るもんだなぁ……」
 フィナに頭をなでられながら、レヴは深いため息をつく。そんなレヴにアップルは非難の眼差しを送っていた。
「じゃあ、アップルさんが私の部屋にいたのって……」
「うん、俺がフィナちゃんを見守って欲しいって頼んだせい。まぁ、それが俺らの役目でもあるしね」
「レヴ殿とアップルさんの役目?」
「そ、我らが猫の王様であるカット王が、王たる器の持ち主かどうかを決める査定人ってところかな。王をお守りする護衛も兼ねてるけどねぇ」
 前足を思いっきり伸ばしながら、レヴはフィナの質問に答えてみせる。彼の言葉にフィナは軽く眼を見開いていた。
 カットが猫の王様とは、どういう意味なのだろうか?
 フィナの疑問を察したのか、レヴは言葉を続けた。
「フィナちゃんは陛下に詳しく話を聞いていないから分からないだろうけど、あの人が魔法を使えるのは俺たち猫のお陰なんだ。俺たち猫はフレイヤ様の使い。そのせいか、微量ながら魔女と同じ魔法が使える力を持っている。ま、それを扱えるのは俺みたいな一部の猫だけだけどね。
陛下は、猫たちから力を譲り受けることで魔法が使えているんだよ。その見返りとして、俺たちファールファグルの猫たちは厚い保護を受けることができるよう保証されている。この国が猫に優しいのには、そういったカラクリがある訳」
「まさか、私たち猫退治人も……」
「猫退治屋は、ヴィッツさまが遺言で立案されたボランティア団体らしい。ティーゲル様は亡き妻の意思を引き継いで、俺たち猫を保護してくれているの」
 ふさふさの尻尾をなまめかしく動かしながら、レヴは言葉を続ける。彼の告げる真実に、フィナの頭はパンクしそうだった。
 通常、女神の血を引いていても魔法を使えるのは女性だけだ。その魔法をカットが使えることすら驚きだったのに、その彼が猫の王様というではないか。
 もう、何が何だか分からない。
「俺も生まれる前だから伝え聞いた話しか知らないけど、ヴィッツ様は陛下の将来を憂いて猫との契約を伴う大魔法を実践なさったらしい。そもそも陛下はフィナちゃんの中途半端な呪いのせいで半分猫なんだ。そのことに気がついたヴィッツ様は我ら猫に契約の話を持ち掛けた。陛下を猫の王にすえる見返りとして、我ら猫を全速力で庇護すると。呪いのせいで不遇の人生を歩むであろう息子を、救ってほしいと。
俺たち猫がヴィッツ様によって受けた恩恵は果てしないものがある。俺たちは陛下が猫の王に相応しい存在であるかどうかを判断するお目付け役を置くことを条件に、この契約を承諾した。そしてヴィッツ様は、陛下にこのことを伝えられたんだ。陛下の力が政治の道具といて扱われないように。陛下自身にこの力を悪用しないように何度も言い含めて。
だからこの事実を知っているのは、俺たち猫と、天国にいるヴィッツ様とティーゲル様、そして陛下だけのはずだった……」
 レヴが翠色の眼を鋭く細める。そんなレヴの様子を見て、フィナは口を開いていた。
「ヴィッツ様は近隣諸国の王たちに、この事実を伝えられていたんですよね」
「そう、猫耳があったとしても陛下が王位を追われないよう、彼女なりの配慮だったと思う。でも、時の権力者たちは思った以上に狡猾だった……」
 レヴの声が不機嫌になる。
 ――君とは一緒になれない。なっちゃいけないんだ……。
 カットの言葉を思い出す。今にも泣きそうな彼は、フィナに何があったかを教えてくれた。
 カットの力を使って、他国に攻め入る。
 このファールファグルを中心とした軍事同盟を結成し領土を広げようという主張を、カットの叔父たちは手紙の返事に書いてきたのだ。
 そこに自分たちを恐怖に陥れた魔女の娘が加わったら、どれほど心強い事だろう。彼らは喜んでフィナとカットを同盟の象徴として祭りあげることだろう。
「カットは、私を戦争に巻き込みたくないそうです。軍人である私をですよ。おかしすぎて、彼から理由を聞かされたときは涙が出ました。私は、女ではなく1人の人間として彼の役に立ちたくて……。彼のために強くなりたくて軍に入ったのに……。私はカットに辛い思いばっかりさせてる……」
 自嘲にが顔に滲んでしまう。
「力で陛下を守れないなら、女の武器で陛下をお守りしたら?」
 くると首を傾げ、レヴはフィナに問う。彼の意外な言葉に、フィナは言葉を失った。
「よっこらせっと……」
 そんなフィナを鑑みることなく、レヴは体を起こして寝台から跳びおりる。床に着地した瞬間レヴの体が光り輝き、彼は人間の姿に戻っていた。
「俺たち猫はヴィッツ様から預かってるものがあってさ、これこれ」
 レヴが両掌をうえに向ける。すると、その周囲を光の粒子が旋回し始めた。それは形をとり、美しいドレスに変わる。絹でできたそれは、ゆったりとレヴの両手に収まった。
 白銀のドレスにはビーズが散りばめられ、まるで雪原のように光り輝いている。
「もうすぐ舞踏会だし、お姫様はおしゃれしなくちゃね」
 そっとレヴはウインクをして、そのドレスを寝台の上に広げてみせた。星屑のように輝くビーズ刺繡にフィナは思わず見惚れてしまう。
 手をのばしてドレスにふれると、絹の滑らかな感触が伝わってきた。
「これは……」
「ヴィッツ様がティーゲル様と舞踏会で踊ったときに着ていたドレスだってさ。もし陛下のお嫁さんが着てくれるなら渡して欲しいって、俺たち猫に託された形見の品。さぁてフィナちゃんどうする? もうすぐ陛下の婚約者を決める舞踏会が行われる予定だけど、肝心の陛下にダンスのお相手がいないんじゃ、様にならないよねぇ」
 にっとレヴは微笑み、フィナに言葉を送る。フィナは微笑みながら、ドレスを手にとっていた。
 ぎゅっと胸元にドレスを抱き寄せ、眼を瞑る。
 女の子らしい服もドレスもフィナはあまり好きでない。
 女性らしくあれと強制された反動のようなものだ。
 カットと街に出たときもブーナットを着て欲しいと頼まれたが、内心はあまり着たくなかった。
 でも、今はどうだろう。
 このドレスを見て、胸をときめかせている自分がいる。
 このドレスを着てカットと踊ることができたら――
「やっぱり私も、女の子なんですね……」
 そっと眼を開け、フィナはドレスを見つめる。フィナの顔にはいつのまにか笑顔が浮かんでいた。




「レヴ……。フィナに俺の秘密喋っただろう……?」
 不機嫌そうな主人の声に、全身の赤毛が逆立つ。レヴは後方へと振り向いた。自分を抱きしめ、その背中に顔を埋めるカットの表情は窺えない。
「さぁ、何のことですか?」
「アップルが教えてくれた……。フィナをお前に盗られそうになったって文句と一緒にね」
 ぶわりと猫耳の毛を逆立て、カットはレヴの背中から顔を離した。アイスブルーの眼は不機嫌そうに歪められている。窓から入ってくる月光が、彼の眼を妖しく照らしていた。
 カットは王の間にある天窓に身を預け、レヴを抱きしめていた。叔父たちとの手紙の一件があってから、彼は部屋に籠ってばかりだ。
 よく行っていた教会にも足を延ばさないし、もちろんフィナとも顔を合わせない。部屋に籠ってはいるが、臣下を呼びつけ仕事だけは怠らない。
 唯一側にいることを許されたレヴからしてみると、カットは仕事に逃げ場を求めているようだった。仕事の合間には政治に関する書籍や、ティーゲルの手記を読み足りない知識を必死になって補おうとしている。
 そして、机の上に突っ伏して寝ることも多くなった。
 ここ数日で彼の顔つきは変わったように思える。柔らかな笑みを浮かべることがなくなり、何かに追いつめられたような鋭い表情を見せることが多くなった。
 そして、泣きそうな表情を浮かべては猫姿のレヴを抱きしめ、何時間もそのままで過ごす。
 ごめんねフィナと、何度も呟きながら――
「やめてくれよ、レヴ……。フィナにこれ以上迷惑はかけたくないんだ。俺に呪いをかけたせいで、彼女はウルにずっと閉じ込められて育ったんだぞ……。それなのに、また――」
「俺は、陛下の方が閉じ込められてる気がしますけどね。今の陛下なんて、まさしく籠の中の鳥じゃないですか」
「俺が鳥? 鳥を捕まえる猫の間違えじゃないのか?」
 カットが嗤う。自嘲ともとれるその笑みが妙に寂しげで、レヴは口を開いていた。
「陛下、向き合うように俺を抱っこしてくれませんか?」
「なんだよ、レヴ」
 不機嫌そうな声を返しながらも、カットはレヴの顔と自分の顔が向き合うよう、体を抱きなおしてくれる。
「ていっ!」
 レヴはカットの頬に、ぶにゅりと肉球パンチをお見舞いしていた。
「レヴ……?」
「もう1回、ていっ!」
 もう片方の頬にも、レヴは肉球パンチをお見舞いする。
「レヴっ!」
 カットは眼をいからせ、レヴの前足を掴んでいた。
「いや、ちょっとムカついたんで……。フィナちゃんは無理やり鳥籠の中に入れられちゃたけど、陛下は自分から籠の中の鳥になっているなって思っちゃって……。あの、引きこもりってやつですね。何かすっごくカッコ悪いですよ今の陛下……」
「自分から引きこもってる?」
「はい。ティーゲル様に助力を乞うたのは及第点だと思いますよ。でも、肝心のフィナちゃんの気持ちはどうなさるおつもりで? アップルに訊いたら、フィナちゃん毎日部屋で泣いているそうです。もう、100パーセント陛下のせい……。女の子泣かせるとかチョーサイテー。これだから総天然ジゴロ自己中猫耳王は役立たずなんですよっ!」
 後ろ足でカットの胸を思いっきり蹴りながら、レヴはたまっていた鬱積を罵倒にして吐き出していく。ここ数日辛気臭いカットのおもりをさせられ、レヴのストレスも頂点に達していたのだ。
「フィナが泣いてる!?」
 レヴの罵倒に、カットは眼を見開いて声をあげた。
「あー吐き出したらスッキリしたーっ! 当たり前でしょっ! 好きな男に告白したのに振られたんですよっ! 結婚できないとか言われたんですよっ! さんざん誘惑しといて、都合が悪くなったらポイですよ! そんな最悪な男があなた以外にいますかっ!?」
 びしっと前足をカットに向け、レヴはカットに言い募る。カットはレヴを見つめ返すばかりだ。
「あー、本当に陛下にはガッカリですよ……。猫耳がなんです? ヴィッツ様の魔法がなんです? 親戚の恐い叔父さんたちはそんなに脅威ですか? つーか戦争ぐらい国王やってたら一生に一回は体験するもんだと思いますよっ! それに妃が巻き込まれるなんてあたりまえでしょうっ!? 巻き込まれる覚悟を決めてる好きな女の子も守れないんですか、あなたはっ!? あなたの気持ちなんてこのさいどーでもいいっ! 今、一番大切なのはフィナちゃんの気持ちでしょうがっ!!」
 カットに対する怒りが、言葉となってあふれ出てくる。自分の思いをカットに叩きつけ、レヴはだらりとカットに向けていた前足をたらした。
 喉が痛い。
 それ以上に、怒りすぎたせいで疲れが小さな体を襲っていた。
「はぁ……はぁ……」
「猫も息切れするんだな……」
 息を切らせる自分にカットが声をかけてくる。レヴはカットの顔を見つめ、ぎょっと毛を逆立てていた。
 カットが泣いている。大粒の涙を流して、笑顔を浮かべている。
「陛下……」
「やっぱりお前は凄いな、レヴ。いつも、俺に必要な言葉をくれる……」
 レヴを胸元に抱き寄せ、カットは俯く。彼の涙が、毛を濡らしていく。それが何だか不快で、レヴはカットに言葉をかけていた。
「陛下……。おろしていただけませんか?」
「レヴ……」
「いいから下ろせ、猫耳総天然王っ!」
「す、すまない……」
 レヴの気迫に押され、カットはレヴを天窓の窓枠に下ろす。瞬間、レヴの体が淡い光に包まれた。レヴは人の形をとり、そっと窓枠に腰を下ろす。
「お前の人間姿。久しぶりに見たかもな……」
 隣に座るカットが、眼を拭いレヴに笑顔を向けてきた。彼の笑顔が愛らしくて、レヴはカットの肩に手を差しのべる。
 レヴは、そのままカットを抱き寄せていた。
「レヴっ?」
「たっく、これだから天然ジゴロは……。泣きたいんだったらこっちの姿でお願いします。猫の姿だと毛が濡れて大変なんですよ……」
 カットと視線を合わせることができず、レヴは彼から顔を背ける。そんなレヴにカットは小さく声をかけてきた。
「ありがとうな、レヴ……」
 振り返ると、自分の主人はいつもの優しい笑顔を浮かべている。そんな彼にレヴも笑顔を返していた。
「ちゃんと責任とって、俺とフィナちゃんのこと幸せにしてくださいね」
「お前は、余計だと思うけどな……」
 レヴの冗談に、カットは弾んだ声で答えてみせた。
 どうしてだろう。主のその発言が、妙に心に突き刺さるのは。
「俺は、余計か……」
「えっ……?」
 苦笑を浮かべ、レヴは呟いてみせる。自分はカットを愛しているという妹の言葉をレヴは思い出していた。
 日頃からカットの天然ジゴロには悩まされていたが、自分はそのカット以上に鈍感だったみたいだ。
 ――じゃあどうして兄様は、陛下とフィナ様のことをいつも悲しげに見つめているの?
 アップルの言葉が脳裏に蘇る。
 違うと否定していた感情が、自分の中で肯定されていく。
「レヴ?」
 カットが自分を呼んでくれる。愛しい主へと顔を向けると、彼は心配そうに自分を見つめていた。
 そんな眼で見つめないで欲しい。また、攫いたくなってしまう。
 どこか遠くへと連れて行きたくなってしまう。
 レヴは、自分を見つめてくるカットの両頬を手で包み込んでいた。そっと彼の顔を覗き込み、優しく微笑んでみせる。
「ごめんね。陛下……」
「レヴっ……」
 カットの耳元で囁き、レヴはカットの額に唇を落としていた。顔を離すと、唖然としたカットの顔が視界に広がる。
 本当は唇を奪ってやりたかったが、それはできない。カットの唇に触れられるのは、この世界でたった1人の女性だけだから。
「どうしよう俺……陛下のことが……大好きだったみたい」
 カットを映した視界が歪む。
 潤む眼に笑みを浮かべ、レヴはカットの頬から手を離していた。
「さようなら……愛しい人……」
「レヴっ」
 カットの叫び声が聞こえる。その声に応えることなく、レヴは部屋から駆けだしていた。
 王の間を跳び出すと、廊下を歩くフィナと眼があった。
「レヴ殿……。その、どうされたのですか?」 
 彼女が驚いた様子で声をかけてくれる。レヴはそんなフィナを抱き寄せていた。
「ちょ、レヴ殿……」
「陛下のこと、お願いね……。フィナちゃん」
 涙声になっている自分が情けない。それでもレヴは、フィナに自分の思いを告げていた。
「レヴ殿……」
 涙を流しながらもレヴはフィナに微笑んでみせる。驚くフィナを離し、レヴはその場から駆けだしていた。



「レヴっ!」
 レヴを追いカットは駆けだしていた。
 涙に濡れたレヴの眼を思い出し、カットは胸を痛める。
 自分の額にキスをして逃げた彼は、どうして泣いていたのだろうか。
 その理由がカットには分からない。
 レヴはカットにとって親友であり、愛すべき飼い猫だ。
 でも、もしかしたらレヴにとってカットは――
「カットっ!」
 カットの思惟は凛とした声に遮られる。その声に猫耳の毛を膨らませ、カットは立ちどまっていた。
 フィナが王の間の扉に手をかけ、カットを見つめている。彼女はカットに駆け寄り、カットを抱きしめてきた。
「フィナ……。どうしてここに……?」
「いかないで、お願い……」
「フィナ……」
「私の側にいてっ!」
 顔をあげ、彼女は泣きそうな眼をカットに向けてくる。彼女の切なげな眼から、カットは眼を離すことができなかった。
「私を見て……カット」
 そっとフィナは俯き、カットの胸元に顔を埋めてくる。
「どうして、ここに……?」
 声が震えてしまう。それでもカットはフィナに問いかけていた。
 彼女を拒絶し、傷つけたのは自分だ。
 その彼女が眼の前にいることが信じられなかった。
「カット……」
 縋るようにフィナがカットの顔を見あげてくる。恥ずかしそうに眼を潤めながらも、彼女は言葉を告げていた。
「私を……抱いてくれますか?」
「えっ!?」
「私を、抱いてくださいっ!」 
 顔を真っ赤にしながらフィナはカットに大声で告げる。彼女の言葉を、カットは理解することができなかった。
「フィナ、ちょ、何言って――」
「あなたは私に言いました。自分に抱かれる覚悟があるのかと。訊かれたときは、そんな覚悟はなかった。でも今は、あなたに抱かれる覚悟がありますっ! あなたと一緒にいる覚悟がありますっ! だから……私を捨てないで……」
 フィナの手がカットの背中にのばされる。彼女はカットを抱き寄せ、カットの胸の中で静かに嗚咽を漏らし始めた。
「誰にも、あなたを渡したくない……。側にいて欲しいの……」
 猫耳にフィナの言葉が突き刺さる。そんな彼女を、カットは強く抱き寄せていた。
「カットっ……」
「一生離さないよ。それでも、君はいいの?」
 涙に濡れた眼をフィナがカットに向けてくる。そんな彼女にカットは優しく微笑んでいた。
 眼の前にいる愛しい女性は偽りのない気持ちを告げてくれている。
 その気持ちに、自分は応えなければならない。
 悲しげなレヴの顔がカットの脳裏を過る。それでもカットは、フィナの顔に両手をのばしていた。
 カットはフィナの顔を両手で包み込み、彼女の唇に自身のそれを重ねていた。
 フィナが眼を見開く。彼女はその眼を細め、カットを強く抱きしめてきた。
 唇を離すと、うっすらと頬を赤らめたフィナが自分を見つめてくる。
「俺は君を傷つけた。君に思いを押しつけて、それが重荷になったら君を拒絶して……。そんな俺でも、君は側にいてくれる?」
「ずっと、側にいるわ……。カットの側じゃなきゃ、嫌」
 フィナは笑ってくれる。そんなフィナにカットは静かに口を開く。
「もう少しだけ待って欲しい。全部、全部終わらせるから……。絶対に君を離したりしたりしないから……」
 彼女のために、やらなければいけないことがある。その決意を、カットはフィナに告げていた。



「ティーゲル様……」
「レヴ、どうした?」
 突然、部屋に入ってきた自分を先王は驚いた様子で見つめてくる。部屋の中央で立ちつくす彼に、レヴは抱きついていた。
「レヴっ!」
 ティーゲルの腕の中で、レヴは猫の姿に戻る。悲しげな翠色の眼を彼に向けると、ティーゲルは優しくレヴを抱きしめてくれた。
「どうした? またカットと、喧嘩でもしたのか?」
「にゃぁ……」
「そうか……。何も言いたくないか……」
 鳴く自分をティーゲルは優しくなでてくれる。皺の寄ったその手の感触が気持ちよくて、レヴは眼を細めていた。
「なぁ、レヴ……。大切な人が自分の側を去って行ってしまうのは、とても寂しいことなだぁ。ヴィッツが死んだときもそうだったが、まさか息子の一人立ちでも同じ思いをするとは、年をとるとは恐ろしいものだ」
「なぁ……」
「お前も、そうか……」
「なぁ……」
 ティーゲルは自身と向き合うようにレヴを抱きなおす。自分に微笑みかける彼がどこか頼りない。
 レヴは慰めるように彼に鳴き声をかけていた。

 

 

 

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