Dragon

 ドラゴンと言えば、みなさんは西洋の竜と東洋の龍を思い浮かべるのではないだろうか? 西洋の竜はファンタジー世界でお馴染みの翼が生えたドラゴンで、東洋の龍は水を司る神の龍。
 竜は太古から水と関係が深く、また蛇とも同一視される。どちらかというと農耕文明の起こりと共に水の神として祀られていた蛇が、龍になったと言い換えるべきか。西洋の竜は東洋の竜と違って悪の化身と思われがちであるがそうでもない。
 カドォウケスという2匹の蛇が1つの杖に絡まり合ったシンボルをご存じだろうか? 知恵のシンボルとされるこの杖はギリシャ神話に出てくる伝令の神ヘルメスの持ち物であり、医療関係のあらゆる場所で象徴的なシンボルとして使用されている。
 エデンの園に出てくるイヴをたぶらかす蛇も、グノーシス主義においては知恵の女神ソフィアが我々人類を無知から救うべく遣わした聖なる動物である。彼らは悪である物質世界から人類を救うためにイヴに知恵の実を食べることを迫るのだ。
 西洋において竜の原型たる蛇は人類から楽園を奪った罪人であると同時に、人類に知恵を与えた叡智の象徴でもある。
 また豊穣とも関係のある竜は渦巻き模様となって世界各地の文明に残っている。ケルトの有名な渦巻き模様は水と関係の深い蛇を表し、それらが後の世になって聖人の守護する聖なる泉のイメージへと変化していったという。
 日本のしめ縄もカドゥウケスと同じく2匹の蛇が絡まり合った混合を表す象徴だとされている。日本では縄文時代から蛇の信仰を土器の中に見ることができた。日本でも蛇は水と深い関係があるとされ、これを制することは即ち治水を意味する。
 クシナダ姫を助けるためにスサノオが、ヤマタノオロチを酒で酔わせて首を切り退治してしまう話はあまりにも有名だ。ヤマタノオロチは出雲川の化身であり、スサノオは暴れ狂うその化物を知恵を持って平定する。古来より治水は農耕になくてはならないものであり、それは人々を支配する者の務めでもあった。
 さて、話を西洋のドラゴンに戻そう。
 あの有名なアーサー王も竜と関りが深いことをご存じだろうか。
 夢魔の子である魔法使いマリーンが幼かった頃、ブリテンはヴォティーガーンによって治められていた。彼は正当なる王位継承者であるアーサー王の父ウーサー・ペンドラゴンとその兄弟ユーサーを追放し王位に治まっていたのだ。この2人に対抗するために、ヴォティーガーンは堅牢な塔を建設する。だが、いくら塔を建てようとしても石組みは崩れるばかり。困り果てた王が占い師に相談したところ、父親が人ではない子の血で土台の角石を濡らさなければならないと助言を受ける。
 そうして王のもとに連れてこられたのが幼いマリーンだった。だが生まれながらにして魔術師である彼には、塔が崩れる本当の原因が分かっていた。
 その理由をマリーンは王に告げる。
 塔の下には巨大な2匹の竜が棲む洞があり、竜たちが暴れるたびに塔が崩れるのだと。王が幼子の言葉を信じ塔の下を掘らせると赤い竜と白い竜が現れ、お互いに戦いだした。
 赤い竜は白い竜に殺され、白い竜もまた姿を眩ましてしまう。
 この2匹の竜はブリテン島におけるケルト民族とゲルマン民族の闘争を象徴しているという。 赤い竜はケルト民族を表し、白い竜はゲルマン民族を表す。
 赤い竜が負けたことはブリテンがゲルマン民族に支配されることを象徴しているという。
 この赤い竜はウェールズの国旗にもなっており、ケルト民族を守護する存在とされている。

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